効果を上げる目的とターゲット層の決め方【チラシ・文書作りのコツ】

目的とターゲット

この記事の対象となる方

この記事は、自分でチラシや文書を作成している販促担当、商品担当、社内レビューを担当する部署の方に向けて、簡単にできるチラシ・文書作りのコツをまとめたものです。

「情報発信は目的とターゲットを決めるのが重要」

こんな話をよく耳にしませんか?マーケティングの世界では常識的な話ですよね。

チラシや文書などを作るときも、目的とターゲットはとても重要です。

言いたいことはわかるけど、そんなに大事なの?なんか難しそう……

目的とターゲットと言われても、「なんかピンとこない」という人もいるのではないでしょうか。

ですが、読者に期待する行動を起こしてもらうには、目的とターゲットの決定に時間をかけて取り組む必要があります。

目的とターゲットを決めることで、チラシや文書で伝えたいメッセージがブレることがなくなります。
ターゲットが知りたい情報を、正しく伝えることができるようになるのです。

この記事では、制作物の指針となる「目的とターゲット」の決め方を解説しています。
なぜ目的とターゲットが重要なのか、事例を交えて解説します。

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なぜ目的とターゲット層を決めるのか

そもそもなぜ目的とターゲットが必要なのでしょうか。

それは、作り手側が期待する行動を読者にしてもらうためです。

届けたいメッセージが、きちんと読者に理解され、共感や興味・関心を持ち、読者に行動を起こしてもらうためです

そのためには、目的とターゲットを正しく決める必要があります。

以前、ある公共団体さまからこんな相談がありました。

「地域住民向けに生活に関する相談センターを開設したが、利用率が低いので改善したい」

その施策としてチラシを配布しているが、問題点がないか見て欲しい、という相談でした。

チラシを見てみると以下のような項目が強調されていました。

  • 相談センターが開設したこと
  • 地域住民向けであること
  • 相談量は無料であること

ですが、よく考えてみてください。

生活相談をしたい人は、相談センターの概要を知りたいのでしょうか。

もちろん必要な情報ではありますが、今まさに何かのトラブルで悩んでいる人がターゲットと考えると、

  • 私の悩みごとは本当に解決してくれるのか
  • どんな内容の相談を受け付けているのか

読者が一番知りたいのは「自分の課題を解決してくれるのか」ではないでしょうか。

相談センターもあくまで手段にすぎません。
目的は課題解決です。

目的とターゲットの解像度を上げて明確にすると、こういった勘違いは起こりにくくなります。

やりがちな間違いは、自分が伝えたいことを優先してしまうことです。

自分が伝えたいことと読者が知りたいことは違うことが多いのです。

ここからは、目的とターゲットを決める方法を解説します。

仮説をもとにターゲット層(誰に)と目的(何を)を決める

「誰に」「何を」伝えるか。目的とターゲットはまさにこれです。

ターゲット(誰に)を想像して、徹底的に伝えるメッセージ(何を)を考えます。

最初から「誰に」と「何を」が決まっていれば苦労はしませんが、それは誰もわかりません。

まずは、仮説を立てていくしかありません。その際、以下の内容を思考の軸に置きます。

  • 【誰に】ターゲット
    情報を届けたい相手は誰なのか
  • 【何を】 目的
    その相手に何を伝えたら期待する行動を起こしてもらえるのか

【誰に】ターゲット層を決める

まずは、これから作るチラシや文書は「何のために作るのか」をあらためて確認して、ターゲットをイメージします。

このとき、ただぼんやり考えてもターゲットは絞り込めません。
ターゲットの基本属性や興味・意識を想像すると絞り込みやすくなります。

例えば、以下のような項目です。

基本属性

  • 年齢、性別
  • 居住地
  • 職業       など

興味・意識

  • 知っている/知らない
  • 興味がある/興味がない
  • すでに持っている/持っていない    など

伝えることで誰にどういう行動をして欲しいのかを考えて、ターゲットを絞り込みます

【何を】目的を決める

チラシや文書を作る目的は、特定したターゲットに作り手側が期待する行動を起こしてもらうことです。

行動を起こしてもらうには、作り手側の一方的な情報発信ではなかなか達成されません。

答えは相手の中にあります。
ターゲットは何を知りたいのかを想像するのが重要です。

とにかく書き出す

頭の中で想像するより、書き出す方が頭の中が整理されやすいです。

まずは、手書きでもテキスト入力でも構いませんので、以下のようなポイントで読者が知りたいことを書き出してみましょう。

  • 相手にとってのメリットとは何か
  • 相手のリスクとなっているものは何か
  • 相手のベネフィットとなるものは何か             など

とにかく思いつくことはいくつでも書きましょう。
頭の中のイメージを言語化していくことで、整理されていく感覚が得られるはずです。

メインメッセージを絞る

さまざまな角度から書き出した要素を、ひとつかふたつのメッセージに絞り込みます。

「せっかく書き出したのに1つに選ばなきゃいけないの?」
そんな疑問を抱くかもしれません。

ですが、伝える情報の軸が複数あると、何を伝えようとしているのか読者の心に届きづらくなります。

メインメッセージはひとつかふたつに絞りましょう。

具体的な事例で解説

ここでは事例を使って、目的とターゲットを決める流れを解説します。

とある商工会が持続化補助金のセミナーを開催するにあたり、セミナーチラシを作成するという設定で考えてみましょう。
企画の主旨は以下のとおり。

持続化補助金セミナーの主旨

コロナ禍で経営状況の厳しい会員企業を応援したい。最近、比較的ハードルの低い補助金が新設された。
この補助金を活用しない企業が多いので、ぜひ活用して欲しい。

この企画主旨に沿って考えてみます。

【事例で解説】ターゲット層を決める

この企画主旨「補助金を活用しない企業」では、まだターゲットが曖昧です。
さらに深掘りしてみましょう。

ターゲットの「興味・意識」を想像して深掘りすると、こんな疑問が湧いてきます。

そもそも補助金を活用していないのはナゼだろう?

補助金を活用していないのには、何かしら理由があるはずです。
その理由からターゲットを絞りこんでみます。

ざっと思いつくのは、こんな理由でしょうか。

①補助金の存在を知らなかった

②社内にわかる人がいないので諦めた

③申請準備が面倒そうなのでやめた

④補助対象企業ではない

⑤補助金は必要ない

他にもありそうですが、今回はこの5つくらいにしておきましょう。

この5つの理由をみていくと、以下の3つに分類することができます。

①そもそも補助金制度を知らない

②③補助金の利用を試みてみたが、手続きのハードルが高いので諦めた

④⑤補助金制度の対象外および必要としていない

④と⑤は、そもそもターゲットとならないので対象外としましょう。

①と②③を比較してみると、②③は一度補助金にトライして諦めた層と予想することができます。

きっとこんな課題を抱えて、補助金を諦めたのではないでしょうか。

企業側

手続き面倒そうだな…。
時間もないし今回は諦めようかな

逆を言うと「手続きの面倒さ」、この課題さえ解消されれば補助金の活用が進みそうですよね。

活用の促進という意味でいくと、セミナーチラシのターゲットは、

・②社内にわかる人がいないので諦めた

・③申請準備が面倒そうなのでやめた

と設定するのが効果的と判断できます。

もちろん仮説が変われば、ターゲットも変わります。

「補助金の存在が知られていないから活用が進まない」という仮説をもとにすれば、ターゲットは①になります。

そのときの情勢や背景などで最適なターゲットを設定してください。

【事例で解説】目的を決める

ターゲットは決まりました。
では、この課題を抱える人たちはセミナーで何が知りたいのでしょうか。

ターゲットの頭の中をイメージして、知りたいと思うことを書き出してみましょう。

  • どんな会社が補助金をもらえているのか
  • 補助金をもらうにはどんな手続きが必要なのか
  • 申請を通すのは難しいのか
  • 申請が通るコツはあるのか
  • 申請について誰に相談すればいいか

このくらいで一度区切ります。

ここから、伝えるべきメッセージをひとつ(またはふたつ)に絞ります。

設定したターゲットは以下です。

  • ②社内にわかる人がいないので諦めた
  • ③申請準備が面倒そうなのでやめた

ターゲットをイメージすると、こんな仮説が生まれてきます。

申請が通るコツをセミナーで伝えたら、
申請する企業が増えるんじゃないか!

仮説を立てると選ぶべきメッセージが絞れてきます。

この仮説をもとにすると、セミナーチラシで伝えるメインメッセージは、

・申請が通るコツはあるのか

が最適と考えることができます。

目的とターゲットはチラシ・文書作りの指針

これで目的とターゲットが決まりました。

【誰に】ターゲット

  • 社内にわかる人がいないので諦めた人
  • 申請準備が面倒そうなのでやめた人

【何を】目的

  • 申請が通るコツ

これがセミナーチラシを作るうえので指針です。チラシの内容を考える拠りどころになります。

例えば、チラシタイトルを考えるときを想定してみましょう。

目的とターゲットをイメージすると比較的簡単に作れます。

こんなタイトルなら興味を持ってもらえそうです。

採択率がアップするコツを教えてくれるんだな、とタイトルから想像つきます。

目的とターゲットを間違えると内容が変わってしまう

しかし、目的とターゲットの設定を間違えると、伝えるメッセージが変わってしまうので注意が必要です。

せっかく目的とターゲットを決めても、読者の心に届かないメッセージを発信しては意味がありません。

先ほどの例で、以下の目的とターゲットに設定してしまったと仮定しましょう。

間違った目的とターゲットの設定例

【誰に】ターゲット

  • 補助金の存在を知らない人

【何を】目的

  • 審査に必要な条件

この指針に沿ってタイトルを作ると、こんな内容になりそうです。

補助金のことをあまり知らない人向けに補助金の概要を教えてくれるセミナー、という印象ですよね。

本来のターゲット(一度補助金にトライして諦めた層)からすると、

企業側

補助金の制度自体は知ってるから聞く必要もないかな

と考えてしまいそうです。

くれぐれも間違った目的とターゲットを設定しないように注意しましょう。

目的とターゲットを間違うと、メッセージの軸が変わってしまいます。

まとめ

目的とターゲットの決め方を解説してきました。

  • 【誰に】ターゲット
    情報を届けたい相手は誰なのか
  • 【何を】目的
    その相手に何を伝えたら期待する行動を起こしてもらえるのか

「誰に何を」を意識して、読者の心にきちんと届くメッセージ選びをしてください。

最後に、もうひとつポイントを紹介します。

それは、可能であれば複数人で意見を持ち寄る、ということ。

一人だけで考えて設定するのはとても難しいです。通常は、さまざまな仮説を検証して答えにたどり着きます。

1人で考えるのに行き詰まったら、周りの人に積極的に聞いてみましょう。

自分では発想できなかった意見がでてくるはずです。

ダンクでは、きちんと情報が伝わることにこだわって、お客さまのわかりやすい情報発信をお手伝いしています。

媒体制作でお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

森順一郎
森順一郎伝わる編集セミナー講師
1997年株式会社ダンク入社。
チラシやパンフレットの制作ディレクション業務を担当。現在は伝わる編集・デザインを追究している。
2018年からはやさしい日本語にも力を入れ、各所で登壇している。
・都庁主催『やさ日フォーラム』デザイン×やさしい日本語の手法を紹介
・子供政策連携室 編集・検討委員会委員(東京都)

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